皆さまいかがお過ごしでしょうか。stepです。今回は小型の時計(30mm以下くらい)及び、パリス環タイプの時計用レザーベルトを自作しましたので紹介してみようと思います。 ちなみにパリス環というのは昔の時計(戦前)などに多く見られるのですが、 ケースに直接ロウ付け等で環が取り付けられているものです。別名ワイヤーラグとも呼ばれています。このパリス環タイプの時計にベルトを取り付ける場合は引き通しベルトやパリス環用のベルトを取り付るのが一般的です。
今回自作したベルトを取り付ける予定の時計は、「セイコー シャリオ 2628-0010」と「セイコー シャリオ クラシカル 2G28-6000」の2本です。いづれもクウォーツ時計で、スモールセコンド(秒針が独立して配置)が気に入って以前購入したものです。年代は1980年~90年あたりの時計だと思います。 又、ケースサイズは2本とも30mm程度の小型の時計です。昔は30mm以下でも男性用としてよく使用されていましたので、この位のサイズはわりと多いです。ただ、 フェイスが小型ですしそのままラグ幅通りだとベルトも細くなります。現代するには全体的にちょっと小さいかなと思うところもあって、2本のシャリオはしばらく放置してしまいました。市販のベルトも探したのですが、なかなか質や価格等も含めて総合的に折り合いがつくものが見つからなかったので、ベルトは作ることにしました。なかなか時間が取れなかったのですが、今回はやっとこの2本に合うバランスのよいベルト(フェイスが小型な分、少し太めのボリュームがあるベルトを作りたかった)をようやく制作することができました。
黒レザーベルト完成
茶レザーベルト完成
今回の装着予定の2本はパリス環タイプではありませんが、後々パリス環タイプのものでも装着できるようにと思って今回のデザインのベルトを作りました(シャリオ クラシカルはパリス環っぽいですが中央にバネ棒が入っています)。 ベルトは黒と茶の2種類を作り、それぞれのシャリオに装着しました。
準備するもの
○レザー
○型紙(多少厚い方がよい)
○バンドネジ(ベルトネジ・ねじ込み式留め金具)
ネジで締め込んでベルトを固定する
○レザークラフト道具一式【カッター・マット・革包丁・銀ペン・ボンド・トコノール・針・糸(ロウビキ済)・菱目打ち・ホビーバイス・ポンチ・ゴムハンマー・ローラー・コバ磨き棒等)】。出来れば専用品を用意すると作業がしやすいのは、トコノール・針・糸・ 菱目打ちですかね。ほかの道具はアイデア次第で色々なもので代用が可能だと思います。
※レザークラフト道具一式がセットになったものも販売されていますのでまとめて欲しい方は・・・
制作手順
※同時に制作していたので黒ベルトと茶ベルトの写真がごちゃ混ぜで見ずらくなってしまいました。すみません。
1. 型紙の制作 「ベルト本体」と「時計のラグ部分を押さえる(小ベルト)」の2つのパーツの型紙を制作。 型紙は少し厚い紙の方がレザーの型が取りやすいです。
2. 型紙に合わせてレザーに型を写す。銀ペン(レザーに線が書けるペン)があると便利。
3. 型に合わせてレザーを切り出す。
4. 黒いベルトの方は裏革を付けますので切り出したレザーと裏革を接着剤でよく圧着しておく。(接着にはレザークラフト定番ボンドの「コニシ G17」、圧着には100ショップで購入したローラーを使っています)
5. 尾錠のバネ棒が納まる部分(折り返す部分)は革包丁やカッター等を使ってレザーを薄くスキ取る。(尾錠を装着するときにレザーが厚いとバネ棒がうまく納まらない可能性がありますので)
6. 楊枝を使って尾錠のバネ棒スペースを確保しながら薄くした部分のレザーを折り返して接着。ダイソーで購入したクイックバークランプがちょっとした固定には便利です。又、押さえる時はレザーにキズがつかないようにあてをしてからクランプします。
ダイソーのクイックバークランプ100円。レバーを握ると徐々にクランプされる仕組みです。
7. 尾錠部分及びベルトの縁に菱目打ちでステッチの下穴をあける。又、時計を固定する小ベルトを通す切れ込み2カ所をあける。
8. 針と糸(ロウビキ済)でステッチを縫う。
ステッチ完成
9. ステッチを縫う際、ホビーバイス等を使って固定すると作業しやすい。ちなみにレザークラフト用品で「レーシングポニー」という固定器具がありstepは木材で自作して一応持っているのですが、小物を作る時はホビーバイスの方が使いやすい(小型であり、角度も自由に変えられる) ので最近はこちらばかりです。
stepが使用しているホビーバイス。机に固定して使うタイプです。
10.本体ベルトに小ベルトの片側を縫いつけ固定。もう片方にはバンドネジの穴をポンチであける(この位置決めの時は実際の時計を仮装着して縫い位置と穴の位置を決めた方が失敗がなくていいです)。
11.トコノールでベルト裏及びサイドを磨く。又、半田小手を使ってコバを焼いたりするとビンテージ感がでます。
12.ベルトループ(定革と遊革)を2本作り糸と接着剤を使って固定。 定革はベルトに糸で固定。
13.つく棒の切れ込みを入れ、尾錠を取り付ける。
14.時計をベルトに装着(時計は小ベルトに引き通した後、ベルトネジを締めて固定)して、腕に巻いてみて小穴の位置を決め、ポンチで穴を開ける。
15.ベルトの完成。
ざっとですが、以上が手順です。
装着してみて
今回2つの時計にそれぞれ黒、茶を装着してみましたが、だいたいイメージ通りに仕上がったと思います。ベルトのサイズとしては本体の太い部分は24mmで、尾錠と剣先に向かって少しボリュームを落として細くしています(20mm)。小ベルトは幅12mmで作っています。このサイズでしたら古いパリス環タイプの時計でも装着できると思います。
黒レザーベルトはこんな感じ
茶レザーベルトはこんな感じ
まとめ
今回は「小型時計用・パリス環用のレザーベルトを自作する」ということでしたが、いかがだったでしょうか。自作のメリットはやっぱり素材選びからフォルムまで全て自分の思った通り自由に決められるということですかね。逆にいえば一点もので誰も使ったことがない訳ですので、当然苦労して作ったわりに使いにくいなんてこともよくあります。stepも自作して失敗したものや、使わなくなったものが沢山あります。そんな時は「さすが製品として売られているものはよく考えられているし、使いやすいし、見栄えもいいなあ」といつも思います。でも、そんなこともひっくるめて少しずつ失敗した経験も次に作る時の役に立っていると思いますし、何よりどうやって作ろうか考えている時が楽しいのでレザークラフトは止められません。
プロの様な仕上がりは難しいですが、世界で一つのものは自分にとって特別です。今回の2本のセイコーの腕時計にもやっとベルトが決まり本格的に着けるのは秋からだと思いますが、またしばらく楽しめそうです。他の時計にも簡単に付け替えることも出来ますし。
それでは、いつも最後までお付き合い頂きありがとうございます。腕時計に乾杯!